< 今朝のお山 >

冷たい雨の一夜が明け、薄青い空がとてもきれいな日となった。

久し振りの秋の日である。

山の空気はしっとりと潤い、柔らかい。

喉を通る空気が優しく胸いっぱいに吸い込みたくなる。

小鳥たちもせわしなく鳴いている。秋の侵入者に警戒しているようだ。

大陸から渡って来るジョウビタキのメスが高い声で鳴く。

その姿は私の2番目のお気に入りだ。山の頂上ではモズが高鳴きを始めた。

小鳥たちはどちらの訪問者にも慌てている。

それでも朝の空気は穏やかで濡れた緑はまだまだ美しい。

ほんのり色づき目を引く葉もあるが、最後の緑を惜しみなく輝かせている。

地表には1年振りのもじょもじゃ、うにゃうにゃが出現している。

ハグロケバエの幼虫は毎年忍法を使い落ち葉の下を移動する。

今年もちょっといたずらして挨拶をしておいた。

こんな秋の日が好きだったと思う、八千草さん。

小さな生きものに視線を注いでくれ、それらが棲む自然の大切さを広く伝えてくれた。

幼稚園での出会いは2013年と2015年の2回。

このお山をとても素晴らしい、素敵な場所と誉めてくれた。

こんな自然で遊ぶことが出来る子どもたちは恵まれていると、その環境で過ごすことの大切さを説いてくれた。

そんな優しい人が逝ってしまった。

目で見て分かるもの、実際に何かが出来るようになることに人は心を向け、それが正しいとする世の中にあって、

私たちの生命を支えてくれている大きな懐に心を馳せる人は多くは無い。

どうしたら人々に伝わるか、何が子どもたちに影響を与えるか日々苦悩しながら私も38年同じ道を歩いてきたが、

行き詰まりも感じている。

そんな中、接点があった人の死に、気力が萎えた。

私の尊敬するあこがれの人、緒方貞子氏も逝ってしまった。

青く澄んだ空を見つめても答えを出してくれない。

気持ちを取り直して進むしかない。

落ち込んだ朝に子どもたちの声が響く。

これからどんぐり拾いで賑やかになる。