< 飼育の在り方 >
グラウンドの工事をしていますが、連日ショベルカーがガーガーやっているので、その様子を見に来た近所の卒園児さんがいいました。
「あのね。聞いて。
卵から孵ったカブトムシを森に放しちゃだめだよ。
だって、ゼリーしか食べてない親から生まれたから、樹液を知らないから生きていけないからね。」
野生で生きる生きものが人の手に渡った際の究極の問題が提示されました。
飼育動物は数々います。
甲虫の飼育は世界的に見ても日本は多くの人が嗜好していて、これから鳴く秋の虫もスズムシに代表されるように、小売店でも販売している生きものです。
しかしちょっと考えてみてください。
秋の虫などは平安貴族の時代から虫かごに取り込み、人がそれを愛で、聴き、書物にも残るほどの文化となって来ましたが、
果たしてかごの中の虫たちの事を考慮してあげていたでしょうか???
あくまでも人間の嗜好がそうさせているのであれば、
親から子へ伝えて生きる術を身に着ける野生動物たちが、一旦人の手で管理されたら、
いざ野生へ放たれた時、果たし生きて行けるのか、大きな問題なのです。
私は野生動物を飼育して、繁殖させることには原則反対ですので、野の動物は野で本来の命を全うして欲しいですし、
それが整う環境がそこにあることが何よりも望ましいと考えています。
研究用に多くの動物が飼育、管理され、食用として育てられてきた家畜や家禽。
動物園の意義がクローズアップされたこともあり、昨今の動物園・水族館はどこもその動物に相応しい生息環境に近づけようと努力しています。
本来は遠く離れた故郷から、世界中に連れて来られているのですから、問題と言えば大きな問題です。
しかしながら人は遠くへ行かなくても世界中の生きものを知り、学ぶことが出来ることは、これはこれでその種を保存していく意味でも崇高な意味を持っていると言えます。
夏休みに何かの生きものをお家に迎えたご家族もいるでしょう。
飼育を始める前に、その生きものの本来の姿を知り、想像して、出来るだけ相応しい環境で共に生きる方法を考えてみてください。
たとえどんな小さな生きものでも、この星で、同じ環境で生きているのですから。