< 半袖ちゃん物語 第1話 >
ホームページのトップに「日々更新中」とありますが、時々疲れちゃってサボってしまいます。
見て下さっている方々にはごめんなさい。
今日から何話続くか分かりませんが、「半袖ちゃん」と題してある年少さんの
お話しをお送りします。
その1話目。この子の成長ぶりをお伝えしましょう。
その子はいつも廊下にいました。いつも先生の後について、ふてくされていました。
一応毎日幼稚園にはやってきます。
「やだー、やだー」と泣きわめく事はありません。何もこちらが言わなければ・・・・。
でもクラスに入れようとすると抵抗し、しまいにはワーワー泣き叫びます。
しょうがないので大好きだという「トーマス」goodsを渡し、気分を和ませてあげました。
でも毎日これではいけません。時々怖い顔をして、「自分で出来ることはやりましょう。」と
お灸をすえに行っていました。
そんなこんなで2か月が過ぎました。
私はいつも遠目からその子の態度、先生の対応をチラチラと見ていました。
6月に入りました。私はまだ笑った顔を見ていません。いつもふてくされています。
でも少し聞き分けが出来るようになってきましたし、クラスにもスーと入るようになりました。
玄関のツバメを一緒に見た時は、ちょっと微笑んでいたかな。
担任の先生の根気強い対応(私はしびれを切らしていましたが)が徐々にじわじわと効いてきたようです。
衣替えも過ぎましたから、みんな半袖のブラウスに変わっても、
その子はいつも長袖でした。家では自分で選んで着てくるようですが、ガンとして長袖にこだわっていたようです。
そんなある日、またまた廊下で先生と格闘していました。
今回はお弁当のランチマットをどうしても片付けない、と言います。
かばんごと廊下に出て来て、いつものように根気強い説得が始まった時、
運悪く、私に見つかってしまったのです。
2対1で戦いに挑みます。廊下に座り込み、根気比べ。
「自分の出来ることはやりましょう。」「それを、わがまま と言います。」「自分の持ち物は大事にしなさい。」
「それじゃお箸が入りません。」「要らないのなら先生が全部もらいます。」「寝転ばないで、座りなさい。」
格闘が続く中、気がつきました。やはり長袖なんです。
この日も湿度がたっぷりで、とても暑い日でしたから、当然汗でびっしょりです。
そこで空かさず攻撃の第2段。
「長袖じゃ暑いでしょう。」私はどんどん袖をまくって行きます。
「だめー、いやだ。長袖がいいーーーーーーー。」
「長袖じゃ暑いよ。ほら、まくると涼しいでしょう」「手を洗っても濡れないよ」
と言いながら左右の袖をどんどんまくって行きました。
その子はまくられた袖を片方ずつふてくされながら下まで降ろします。
また私がまくりあげます。この繰り返しを何回続けたでしょうか。
とうとう私のねばり勝。袖を下におろさなくなり、ランチマットにお箸セットを置いて、
たたみ出しました。そこからは無言。
その子は身の回りの事は何でもできるのです。
ただおへそがいつも背中にお出かけしているだけです。
10分近くはたったでしょうか。担任の先生はクラスがあるので部屋へ戻りましたが、
その子はじっと私が見つめる前で、しっかりとお箸をランチマットに包み、カバンに入れました。
丁度帰り支度の時間で、クラスメイトがトイレへ次々と出てくる中、私がその都度
「やったー、やったー、出来た、出来た」「やれば出来るね。」と繰り返し、偉い、さすが、と連呼していました。
クラスメイトもつられてその子を誉めながら、頭なんか{いい子、いい子}されちゃって、
いつもと勝手が違う顔でクラスに戻って行きました。
それが金曜日。そして次の月曜日。
なんとその子が半袖を着てきました。しっかり自分で選んだそうです。
私にまたまくりあげられるのがイヤだったのか、やっぱり暑いから半袖は涼しいと感じたのか分かりませんが、
まずはその事を驚きと共に茶化しますが、ニタニタするだけであくまでもクールに無言。
そして朝の外集合で最大の驚きがやって来ました。
今まで一度たりとも参加しなかったリズム体操を、何食わぬ顔をして、しっかり、それもとても
上手にやるのです。きちんと自分の列に並んで。並ぶのが大嫌いだったのに!
彼に何が起こったのか・・・・・・。
金曜日の無言の格闘が、彼の琴線に触れ、見事に響き、変貌して登園したのです。
「これじゃいけない、ちゃんとしよう。」と思ってくれたのでしょうか?
何年やってても、子どもは不思議で面白いと感じる瞬間です。
その日からその子を「半袖ちゃん」と称しました。
それ以来毎日半袖です。
これからこの半袖ちゃんが、どのように進化していくか、見つめて行くことにいたしましょう。
ちなみに今日は運動会のお遊戯をまったくやらず、以前のようにふてくされた顔で、
先生の机の下に潜り込んで、くにゃくにゃしていました。
ちょっと顔を見に行ったら、「オッ、・・・」という顔をしましたが、ごろりんと寝転がりポンポンで遊んでいました。
子どもはいつの時代も恐るべし、です。
これからの成長が本当に楽しみです。ガンバレ半袖ちゃん!